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東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)214号 判決 1985年7月17日

原告

テキサス、インストルメンツ、インコーポレーテツド

被告

特許庁長官

主文

特許庁が昭和56年審判第18786号事件について、昭和58年5月25日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1当事者の求めた裁判

原告は、主文同旨の判決を求め、被告は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

第2請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和49年12月26日特許庁に対し、名称を「熱応答弁構体」とする発明(以下「本願発明」という。)につき、1973年12月26日アメリカ合衆国においてした特許出願に基づく優先権を主張して特許出願をし、昭和54年8月3日出願公告がされたが、特許異議の申立があり、昭和56年3月10日拒絶査定を受けたので、同年9月16日審判を請求した。特許庁はこれを同庁昭和56年審判第18786号事件として審理したが、昭和58年5月25日右審判の請求は成り立たない旨の審決をし、その謄本は同年7月13日原告に送達された(なお、出訴期間として3か月が附加された。)。

2  本願発明の要旨(特許請求の範囲)

合成樹脂製の成形体と、この成形体に固定されて成形体との間に一室を画成する熱伝導性金属体とを有し、前記成形体は第1ニツプルとこれに隣接した第2ニツプルとを有し、これらのニツプルは共に流体管路に接続されるようになつており、前記両ニツプルの中の一方のものは入口通路を持ち他方のものは出口通路を持ち、これらの各通路の各一端は前記室の一側において互いに側部と側部を並べて前記室内に開口し、前記両通路の中の一方のものの前記一端のまわりには弁座が形成されており、前記室の前記一側において前記合成樹脂成形体上には前記両通路の一方の端の両方のまわりを囲む輪の少なくとも一部を成す衝当部材が形成され、温度の変化に応じて第1皿状形と第2反転皿状形との間に反転する周辺部が前記衝当部材と一致した大体円形皿状の熱応動円盤がその中心部と前記弁座とを一致させその一側面が前記両通路の一方の端に面するように設けられ、前記金属体と前記熱応動円盤との間にはばねが設けられて、平常時には第2反転皿状形を呈する熱応動円盤の中心部を前記弁座に押しつけて前記両通路間の連通を閉塞し、また温度の変化に応じて前記熱応動円盤がばねの作用に抗して前記第1皿状形となりその中心部が前記弁座から離れ周辺部が前記衝当部材に係合し熱応動円盤の一側において両通路間を連通させて流体の流れを許すように構成されたことを特徴とする熱応答弁構体。

3  審決理由の要点

1 本願発明の要旨は前項のとおりである。

2 これに対し、本願発明の出願日前である昭和48年12月16日の出願であつて、本願発明の出願後である昭和50年7月24日出願公開された実願昭48―145665号(実開昭50―87341号公報)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「引用例」という。)には、「第2ボデー(2)はその外周面にはねじ(30)が刻んであつて、これに適合するエンジン水室の壁のねじ孔にねじ込み、下端のフイン(31)を水室内に露出する。」(引用例の明細書5頁14行ないし17行)、及び「エンジンの冷却水の温度はフイン(31)を介し第2ボデー(2)内の室(29)内に伝達される。」(同6頁5行ないし7行)の記載からみて、第2ボデーが熱伝導性体であることは明らかであるから、引用例に記載の考案(以下「引用考案」という。)は、「第1ボデーと、この第1ボデーに固定されて第1ボデーとの間に一室を画成する熱伝導性体とを有し、前記第1ボデーは第1ニツプルとこれに隣接した第2ニツプルとを有し、これらのニツプルは共に流体管路に接続されるようになつており、前記両ニツプルの中の一方のものは入口通路を持ち、他方のものは出口通路を持ち、これらの各通路の各一端は前記室の一側において互いに側部と側部を並べて前記室内に開口し、前記両通路の中の一方のものの前記一端のまわりには弁座が形成されており、前記室の前記一側において第1ボデー上には前記一方の通路の一方の端のまわりを囲む輪の少なくとも一部を成す衝当部材が形成され、温度の変化に応じて第1皿状形と第2反転皿状形との間に反転する周辺部が前記衝当部材と一致した大体円形皿状の熱応動円盤がその中心部と前記弁座とを一致させその一側面が前記両通路の一方の端に面するように設けられ、前記熱伝導性体と前記熱応動円盤との間にはばねが設けられて、平常時には第2反転皿状形を呈する熱応動円盤の中心部を前記弁座に押しつけて前記両通路間の連通を閉塞し、また温度の変化に応じて前記熱応動円盤がばねの作用に抗して前記第1皿状形となりその中心部が前記弁座から離れ周辺部が前記衝当部材に係合し熱応動円盤の一側において両通路間を連通させて流体の流れを許すようにした熱応答弁構体。」という構成を有するものと認められる。

3 そこで、本願発明と引用考案とを比較すると、両者は、①一室を画成するものが、本願発明においては合成樹脂製の成形体と熱伝導性金属体であるのに対し、引用考案においては第1ボテーと熱伝導性体である点及び②衝当部材が、本願の発明においては両通路の一方の端の両方の周りを囲んでいるのに対し、引用考案においては一方の通路の一方の端の周りを囲んでいる点の2点において一応相違するが、その他の点においては一致するものと認められる。

4  まず前記相違点①について検討すると、本願発明において一室を画成する部材の一部に合成樹脂製の成形体を用いるのは、明細書の「弁構体の種々の構成は大部分が、構造が複雑になつても制作費に左程差を生じない合成樹脂成形体に組み込まれている。」との記載からみて、弁構体の制作を経済的に行なうためと認められるが、一般に物品の製作を経済的に行なうために合成樹脂製の成形体を利用することは周知の事項であるばかりでなく、弁構体において、一室を画成する部材を合成樹脂製の成形体にすることは従来周知の技術であり、また、熱伝導性体として金属体は周知のものであるので、前記相違点①の本願発明の構成に発明は認められない。次に前記相違点②について検討すると、本願発明の明細書の「肩部27は前記円板が肩部27により密封的に係合されるのを防止するため圧力を前記円板の両側にて等化せしめる切欠き29(第3図)を設けられている。」の記載からみて、本願発明の衝当部材、すなわち肩部27が輪の少なくとも一部を成す、すなわち切欠き29を有しており、熱応動円盤、すなわち円板が肩部27に接していても、流体が切欠き29の存在により円板の一側のみならず両側に入り込むことは明らかであるので、本願発明の明細書に記載された、「最も重要な構成は、2つの通路が互いに側部を並ばせて弁室内に開口しており、バイメタル用衝当部材が2つの通路の双方を取巻いた輪の形になつていることである。バイメタル円盤の周辺部が衝当部材に衝当して入口及び出口通路間に弁室を通る流体の流通を可能にした時に、この流通はバイメタル円盤の一側においてのみ起る。この構成により、円盤の他の側が流体の流れから熱的に絶縁される傾向を最小にし、これによつて、温度をモニターされる物体と熱伝導状態にある金属体の温度が常にバイメタル円盤に敏速に伝わり両者が精確に一致した温度状態に保持されるようになる。本発明の構成によれば、両通路の端部間を流れる流れがバイメタル円盤の周辺部をまわつて流れることがなく、流れによつて運ばれることのある汚染物質が弁室内に入り込む時にバイメタルの周辺部に沈着するおそれがなく、弁構体の作動的に信頼性が保たれる。」という作用効果は顕著のものとは認められず、引用考案の作用効果と比較して格別の差異がない。したがつて、前記相違点②の本願の発明の構成にも発明は認められない。

5  そうすると、本願発明は引用考案と同一であると認められ、本願発明の発明者と引用考案の考案者が同一であるとも、本願出願の時において本願発明の出願人と引用考案の出願人が同一であるとも認められないので、本願発明は特許法29条の2の規定により特許を受けることができない。

4  審決の取消事由

1 本願発明と引用考案との間には、構成上審決が認定した2つの相違点の外に、次のとおり重要な相違点が存するのに、審決は、これを看過している。

すなわち、本願発明は、特許請求の範囲の記載から明らかなとおり、(イ)2つの通路について、「これらの各通路の各一端は前記室の一側において互いに側部と側部を並べて前記室内に開口し」と規定し、また、(ロ)熱応動円盤について、「その一側面が前記両通路の一方の端に面するように設けられ、」と規定し、更に、(ハ)右円盤が第1皿状形となつた場合について、「熱応動円盤の一側において両通路間を連通させて流体の流れを許す」と規定しているのであり、この点で引用考案とは全く異るものである。右(イ)ないし(ハ)の構成に関連させて、本願発明と引用考案とを対比すると次のとおりである。

(1)  (イ)の構成について

(1) (イ)の構成でいう「前記室」とは、本願発明の特許請求の範囲に「合成樹脂製の成形体と、この成形体に固定されて成形体との間に一室を画成する熱伝導性金属体とを有し」とあるとおり、「合成樹脂製の成形体」と「熱伝導性金属体」との間に画成された「一室」のことである。

これに対し、引用考案において、右一室に相当するとみられる室は、その明細書添付図面(別紙図面)から明らかなとおり、「第1ボデー1」と「第2ボデー2」との間に画成された隙間部分、すなわち、「中空の脚23」の外側及び下側の空間全体であり、「室29」を含むものである。被告は、引用考案における「バイメタル26が設けられている空所」が本願発明の室に相当すると主張するが、これは一室の一部には相当するが、「室」そのものではない。

(2) 次に、右(イ)の構成にいう「各通路」についてみるに、本願発明のそれは、特許請求の範囲に、「前記成形体は第1ニツプルとこれに隣接した第2ニツプルとを有し、これらのニツプルは共に流体管路に接続されるようになつており、前記両ニツプルの中の一方のものは入口通路を持ち他方のものは出口通路を持ち、これらの各通路の各一端は前記室の一側において互いに側部と側部を並べて前記室内の開口し、」とあるとおり、共に「成形体」中を通つて「前記室内」に開口しているものである。

これに対し引用考案におけるこれら通路に相当するものは、前記図面からも明らかなとおり、「中空の脚23の中心部に設けられた中空部」及び「室29に向けて上方から開口している孔22」であり、本願発明の構成とは著しく異るのである。

(2)  (ロ)の構成について

本願発明における「前記両通路」が叙上のとおりである以上、本願発明の「熱応動円盤」に相当する引用考案の「バイメタル26」の上側面は、一方の通路に相当する「中空の脚23の中心部に設けられた中空部」の下端に面しているものの、他方の通路に相当する「孔22」の下端には面していない。

(3)  (ハ)の構成について

本願発明にあつては、熱応動円盤の一側において両通路間を連通させて流体の流れを許すのであるが、引用考案にあつては、総ての流体は、肩部24のところどころに設けられた切れ目32を通つて外方に流れ、こうして流れ出た流体のある部分は、バイメタル26の他側に沿つて流れるものである。

2 本願発明は、1の(イ)ないし(ハ)の構成及び他の構成と相まつて、顕著な作用効果を奏するのに、審決はこれを看過している。

(1)  本願発明の叙上(イ)ないし(ハ)の構成によると、「前記両通路の中の一方のものの前記一端のまわりには弁座が形成されており」という構成と相まつて、共に成形体中に形成された両通路の各一端が弁座をへだてて互いに側部を並べて室内に開口し、弁の開通時に、一方の通路から出た流体が弁座を越えて熱応動円盤の一側において直ちに他方の通路に流入し、熱伝導性金属体からなる熱応動円盤への熱の伝達を妨げるような流れ方をしないので、良好な熱応動をするという作用効果が達成される。

(2)  これに対し、引用考案にあつては、前記のような構成であるため、一方の通路に相当する「中空の脚23の中心部に設けられた中空部」から出て、他方の通路に相当する孔22に流体が流入するまでに、脚23の外側の筒状の室29内を、本願発明の金属体に相当する第2ボデーの面に沿つて流れるために、右流体の温度は、第2ボテーによく伝達されてしまい、折角フイン31から伝達されたモニターされるべき物体の温度が流体の温度の影響を受けてしまうことになるのである。

第3請求の原因に対する被告の認否及び主張

1  請求の原因1ないし3の事実及び4のうち本願発明の特許請求の範囲中に、原告が(イ)ないし(ハ)の構成として主張する記載のあることは認めるが、その余の主張は争う。審決には、原告が主張するような誤りはない。

2  被告の主張

1(1) 原告主張の(イ)の構成について

引用考案にあつては、引用例に記載の中空の脚23の中心部に設けられた中空部及中空の脚23の外周部と第2ボデー2の内周部に上つて囲まれた環状の部分が本願発明の両通路に相当するのであり、バイメタル26が設けられている空所が、本願発明の「室」に相当し、この空所は、本願発明の合成樹脂製の成形体に相当する第1ボテーと本願発明の熱伝導性金属体に相当する第2ボデーとの間に画成されている。

(2) 同(ロ)の構成について

引用考案における両通路が前記のとおりであり、バイメタル26が本願発明の熱応動円盤に相当するのであるから、原告の主張は当らない。

(3) 同(ハ)の構成について

引用考案における両通路及びバイメタル26が前記のとおりであり、また、流体の一部がバイメタル26の他側に入り込むものの、その他側はいわば流体の袋小路を形成し、そこでは流体が滞溜するだけであり、したがつてその大部分はバイメタル26の一側において流れることは明らかであるから、この点も本願発明と差異がない。

2 原告の2の主張について

引用考案において、モニターされる物体の温度の影響を最も受ける部分は、常識的にみて第2ボデー2のフイン31の部分であり、フイン31に近接して設けられているバイメタル26は、フイン31の温度の影響を最も受けるものであるから、作用効果に関し本願発明と引用考案との間に格別の差異はない。

第4証拠関係

本件記録中の書証目録の記載を引用する。

理由

1  請求の原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。

2  そこで、原告主張の審決取消事由について検討する。

1 (イ)の構成に関する主張について

(1)  本願発明は、特許請求の範囲において、2つの通路につき、「これらの各通路の各一端は前記室の一側において互いに側部と側部を並べて前記室内に開口し、」と記載されていることは当事者間に争いがない。

そこで、本願発明の右「室」についてみるに、当事者間に争いのない特許請求の範囲の「合成樹脂の成形体と、この成形体に固定されて成形体との間に一室を画成する熱伝導性金属体を有し、」との記載からすると、右「室」とは、成形体と金属体とによつて囲まれた空間部分であるということができる。また、本願発明における2つの通路についてみるに、右特許請求の範囲における「前記成形体は第1ニツプルとこれに隣接した第2ニツプルとを有し、これらのニツプルは共に流体管路に接続されるようになつており、前記両ニツプルの中の一方のものは入口通路を持ち他方のものは出口通路を持ち、これら各通路の各一端は前記室の一側において互いに側部と側部を並べて前記室内に開口し、」との記載からすると、成形体に2つのニツプルを形成し、その2つのニツプル内にそれぞれ通路を設けたものであることが認められ、したがつて2つの通路は、共に成形体内に形成されているものということができる。そして、このことと特許請求の範囲の前掲「これらの各通路の………」の記載とを併せ考えると、右各通路は、その一方の端が互いに側部と側部を並べて成形体と金属体とで画成された室の一側に開口しているので、右各通路が金属体と接触している部分があると解する余地はない。

(2)  そこで、本願発明の右「室」及び「2つの通路」が引用考案のどの部分に相当するかについて考える。

成立に争いのない甲第7号証によると、本願発明の合成樹脂製の成形体に相当する引用考案の第1ボデーと、本願発明の熱伝導性金属体に相当する引用考案の第2ボデーとの間には、本願発明のように明瞭に画成された「室」は存在しないが、右両ボデーに囲まれた部分という点からすると、本願発明の「室」に対応するものは、第1ボデーの中空の脚23の外周面と第2ボデーの内周面との間に形成された環状の室29及び脚23の先端部と第2ボデーの間に形成された部分すなわちバイメタルの下方部分を含む領域と解するのが相当である。被告は、脚23の下方部分すなわちバイメタル26が設けられている空所部分のみが本願発明の「室」に相当すると主張するが、右部分は空所の一部分に過ぎず、室29も前述のとおり両ボデーに囲まれた部分であり、しかも後述のとおり右室29を本願発明の通路に相当する部分とみることはできないから、被告の右主張は採用できない、

次に、引用考案の2つ通路について考えるに、前掲甲第7号証によると、引用考案にあつては、第1ボデーの脚23の中空部及び孔22が第1ボデー内に形成された通路であることは明らかであるが、環状の室29は、右両通路間にあつて流体が通る部分ではあるものの、前述のとおり第1ボデーと第2ボデーに囲まれているから、本願発明の成形体に対応する第1ボデー内に形成された部分ではないことが認められる。そうしてみると、この環状の室29は、本願発明でいう通路の一部に相当するものということはできない。

(3)  以上のとおりであるから、引用考案は、本願発明における(イ)の構成を具備していないものというべきである。

2 (ロ)の構成に関する主張について

本願発明は、特許請求の範囲において、熱応動円盤につき、「その一側面が前記両通路の一方の端に面するように設けられ、」と記載されていることは当事者間に争いがない。

一方、本願発明と引用考案との2つの通路に関する対比関係は、前認定のとおりであるところ、前掲甲第7号証によると、引用考案におけるバイメタル26の一側面は、一方の通路である脚23の中空部の端部に面しているが、もう一方の通路である孔22の端部には面していないことが認められる。したがつて引用考案は、本願発明の(ロ)の構成を具備していないといわなければならない。

3  (ハ)の構成に関する主張について

本願発明は、特許請求の範囲において、熱応動円盤が第1皿状形になつた場合について、「熱応動円盤の一側において両通路間を連通させて流体の流れを許す」と記載されていることは当事者間に争いがない。

一方、前掲甲第7号証によれば、引用考案にあつては前認定のとおり、バイメタル26の一側面が一方の通路である孔22の端部に面していないため、バイメタルが開放位置にあるとき(本願発明でいう第1皿状形になつた場合)、2つの通路は、バイメタル26の一側において連通されるのではなく、室29を介して連通されることとなることが明らかである。したがつて、引用考案は本願発明の(ハ)の構成を具備しない。

4  そして、成立に争いのない甲第2号証の2、3によれば、本願発明は前記(イ)ないし(ハ)の構成により、金属体から流体への熱の伝達は前記「室」のみにおいて行われ、2つの通路において直接伝達されることがなく、金属体からの熱は、前記室内に設けられた熱応動円盤(サーモスタツト型バイメタル円板)に敏速に伝わるため、両通路間を閉塞する右円盤の閉鎖位置(第2皿状形)と両通路を連通する開放位置(第1皿状形)の切換を良好にすることができるとの作用効果を奏することが認められる。一方、右構成を具備しない引用考案は右のような作用効果を奏しないことが明らかである。

5  以上のとおり、本願発明における(イ)ないし(ハ)の構成を引用考案が具備していない点で両者は構成上相違し、かつ作用効果も異なるから、この相違点を看過して本願発明が引用考案と同一であるとした審決の判断には誤りがあり、審決は取消を免れない。

3 よつて、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(瀧川叡一 牧野利秋 清野寛甫)

<以下省略>

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